九月の台所は「だし」をひと口

九月の台所は「だし」をひと口

九月の台所には、二つの季節が並んでいます。

冷蔵庫には、夏の名残の野菜。

店先には、少しずつ増えてきた秋の食材。

昼間はまだ暑く、夕方になると温かなものが気になる。

何を作ろうか考えても、その日の気分がなかなか決まらないことがあります。

そんな日は、料理の名前を先に決めなくてもよいのかもしれません。

まずは、小さな鍋に湯を沸かす。

だしを加えたら、味つけをする前にひと口だけ味わってみる。

湯気と一緒に立ち上がる香り。

口に含んだときの、やわらかな味。

それを確かめてから、今日の一品を考えてみます。

もう少し軽くしたいなら、ねぎや豆腐を加えて澄んだ汁ものに。

少ししっかり食べたいなら、冷蔵庫にある野菜を入れて味噌を溶く。

ごはんを炊くほどではない日は、だしを使って簡単な麺にしてもよさそうです。

最初から献立を完成させようとすると、材料や手順ばかりが気になることがあります。

けれど、だしをひと口味わったあとなら、今の自分が食べたいものを少し選びやすくなるかもしれません。

もちろん、毎回きちんとだしを取る必要はありません。

時間のある日は、昆布やかつお節から。

急いでいる日は、すぐに使えるだしやスープに頼る。

何も作りたくない日は、お湯に溶かした一杯だけでも構いません。

手間をかけたかどうかではなく、その日に用意できる形を選ぶこと。

それも、自分の暮らしを養う方法の一つです。

味が決まらなければ、少し薄いまま食卓へ運んでもよい。

あとから味噌や塩を足して、その日のちょうどよいところを探せばよいのです。

夏から秋へ向かう九月。

献立に迷った日は、料理名ではなく、だしのひと口から食卓を始めてみませんか。

今日の調律

夕食を考える前に、小さな鍋へ湯を沸かしてみましょう。

だしを加えたら、味つけの前にひと口だけ。

味噌を溶きたいのか。

答えを急がず、そのひと口から今日の食卓を決めてみましょう。

そのまま飲みたいのか。

野菜を加えたいのか。

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